
最近、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する「フェムテック」という言葉をよく耳にするようになりましたね。経済産業省もこの分野に力を入れており、企業が新たに事業を立ち上げる際の補助金制度も整備されています。
しかし、いざ申請しようと公募要領を読んでみても、内容が複雑で専門用語が多く、採択されるためのポイントがどこにあるのか分かりにくいと感じることも多いのではないでしょうか。
特に2025年度は、過去の実績や具体的な導入効果が求められる傾向が強まっており、単なるアイデアだけでは採択が難しくなっているのが現状です。
多くの企業様から「ウチの企画は通るのだろうか?」というご相談をいただきます。
こちらの記事を参考に検討ください。
- 2025年度のフェムテック補助金の金額や対象経費の仕組み
- 審査で落とされないためのNG条件と必須となる効果検証の指標
- 生理やPMSなど具体的な課題解決に向けた最新の採択事例
- 自社の課題に合ったフェムテックサービスの選び方と導入戦略
2025年最新のフェムテック補助金の概要と金額
まずは、今年度の制度がどうなっているのか、全体像を把握しましょう。
フェムテック関連の補助金は年々ルールが少しずつ変わっています。「去年はこれで通ったから」という油断は禁物ですよ。
ここでは、制度の背景にある国の意図から、実務的なお金の話まで詳しく解説していきます。
経済産業省フェムテック実証事業の公募要領
経済産業省が主導する「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」は、単にお金を配るだけの制度ではありません。
この補助金の背景には、日本が直面している深刻な労働人口の減少と、それに伴う経済損失への危機感があります。
実は、女性特有の月経に伴う症状や更年期障害などによる労働損失は、年間で数千億円規模にのぼると試算されています。国としては、フェムテックを活用して女性が働きやすい環境を整えることで、
これらの「見えない損失」を解消し、日本全体の労働生産性を上げたいという明確な狙いがあるのです。
ですから、申請書を書く際も、単に「女性に優しいサービスです」とアピールするだけでなく、「このサービスを導入することで、企業の生産性がこれだけ向上します」という経済合理性の観点を持つことが非常に重要になります。
これまでの公募要領を読み解くと、制度創設初期の「フェムテックという言葉を広めよう(認知フェーズ)」から、現在は「本当に効果が出るサービスを社会に定着させよう(実証・実装フェーズ)」へと完全に移行しています。
2021年頃は目新しいアイデアであれば採択されるチャンスもありましたが、2025年度においては「そのサービスは本当に継続可能なのか?」「一過性のイベントで終わらないか?」というビジネスモデルの確実性が厳しく問われるようになっています。
ここがポイント
2025年度の採択件数は非常に絞り込まれており、狭き門となっています。その分、採択されれば国のモデル事業として大きな信頼を得ることができます。「実証」のその先にある「社会実装」を見据えた計画書作りが必須ですよ
また、事務局の体制も変化しており、制度設計中心のコンサルティング会社から、普及啓発を得意とする広告代理店などが関わる体制へとシフトしています。
これは、国が「制度を作る段階」から「ムーブメントを広げる段階」へとフェーズを進めていることの表れとも言えるでしょう。
補助金額の上限と対象経費の仕組みを解説
皆さんが一番気になるのは、やはり「いくらもらえるのか」という点ですよね。この補助金は、事業にかかった経費の一部を後から国が負担してくれる仕組みです。
一般的に、本事業における補助金額の上限は500万円から1,000万円程度で設定されることが多いです。
ただし、この金額は年度や「コンソーシアム(複数企業の連携体)」を組むかどうかによって変動する場合があります。
補助率は通常「1/2」または「2/3」となります。
例えば、補助率が2/3で上限が500万円の場合、事業全体で750万円の経費を使えば、そのうちの500万円が後から戻ってくるイメージですね。
残りの250万円は自己負担となるため、キャッシュフローの計画は綿密に立てる必要があります。
対象となる経費は、実証事業を行うために直接必要な費用に限られます。
具体的には以下のようなものが挙げられます。
| 費目 | 具体的な内容例 |
|---|---|
| 人件費 | 実証事業に直接従事するスタッフの作業時間分の給与 |
| 謝金 | 外部の専門家(医師や助産師など)への講演・指導料 |
| 旅費 | 実証フィールドへの移動にかかる交通費・宿泊費 |
| 外注費 | システム開発の一部委託や、アンケート集計の委託費 |
| 広報費 | 実証参加者を募集するためのチラシ作成やWEB広告費 |
ここで行政書士として特に注意を促したいのは、「対象外経費」の落とし穴です。多くの補助金で共通することですが、パソコンやタブレット、スマートフォン、オフィス家具など、事業以外にも使える「汎用的な物品」の購入費は、原則として対象外になります。「実証のためにiPadが必要だ」と主張しても、それが実証終了後に他の業務に使えてしまうなら、補助金で買うことはできません。また、販売するための商品の「仕入れ代金」も対象外です。あくまで「開発」や「実証実験」にかかるコストが支援されると考えてください。
資金繰りに注意!
補助金は基本的に「後払い」です。最初に自社で全額を立て替え払いし、事業終了後の確定検査を経て、忘れた頃に入金されます。500万円規模の現金を数ヶ月間持ち出す体力があるかどうかも、事前に確認しておく必要があります。
2025年度の採択結果とスケジュールの詳細
この補助金は、思い立った時にいつでも申請できるわけではありません。年に一度のチャンスを逃すと、来年まで待たなければならないため、スケジュールの把握は戦略の要です。
例年のスケジュール感としては、まず2月〜3月頃に経済産業省が事業を管理する「事務局」を公募・決定します。その後、事務局によって詳細なルールが策定され、4月から6月にかけて補助事業者の公募が行われるパターンが一般的です。公募期間は通常1ヶ月〜1.5ヶ月程度しかありません。この短い期間の間に、パートナー企業を見つけ、実証内容を固め、数百ページに及ぶ申請書類を作成するのは至難の業です。
2025年度に関しても、採択結果の発表は7月下旬から8月上旬頃になることが予想されます。採択されたとしても、すぐに事業を始められるわけではありません。「交付申請」という手続きを経て、正式に「交付決定通知」を受け取ってからでないと、発注や契約などの経費発生行為は認められないのです。この「交付決定」が出るのが9月頃になることもあり、実質的な事業実施期間は半年足らず(9月〜翌年1月頃)というケースも珍しくありません。
採択率の傾向と対策
近年の傾向として、応募件数は落ち着いてきているものの、採択件数が絞り込まれているため、採択率は依然として厳しい状況が続いています。2021年度は約25%程度でしたが、2024年度以降はさらに質の高い提案が求められ、件数が一桁台になることもあります。これは「とりあえず出してみよう」という記念受験的な応募が減り、本気で事業化を目指すプレイヤー同士の戦いになっていることを意味します。
対策としては、公募開始を待たずに準備を始めることです。「もし公募が出たら、御社と一緒にやりたい」という内諾を、自治体や導入先企業と冬のうちに取り付けておく。これができるかどうかが、採択の分かれ目になります。
jGrants申請とgBizID取得の注意点
ここ、意外と落とし穴なんです。素晴らしい事業計画ができていても、システムへのログインができなければ申請すらできません。最近の国の補助金は、紙での郵送手続きが廃止され、デジタル庁が管轄する電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」を通じて行うのがスタンダードになっています。
このjGrantsを利用するためには、法人向けの共通認証IDである「gBizIDプライム」というアカウントが必要不可欠です。問題は、このIDの発行に時間がかかることです。「gBizIDプライム」を取得するには、オンラインでの情報入力に加え、法務局で取得した「印鑑証明書」と「登録印鑑を押した申請書」を運用センターへ郵送し、審査を受ける必要があります。
通常時でも発行までに2週間程度、補助金の締め切りが重なる繁忙期には3週間以上かかることも珍しくありません。「締め切り当日にIDがないことに気づいた!」となっても、特急対応などは一切してもらえません。実際に、ID取得が間に合わず泣く泣く申請を断念した企業様を何社も見てきました。
暫定プライムアカウントについて
過去には特例として、オンラインのみで即日発行できる「暫定プライムアカウント」での申請が認められた時期もありましたが、これはあくまで緊急措置です。基本的には「gBizIDプライム」が必須と考えてください。
行政書士からのアドバイスとしては、補助金を使う予定が少しでもあるなら、今すぐにID申請を行うことを強く推奨します。IDの取得自体は無料ですし、有効期限もありません。また、このIDは「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」など、他の主要な補助金でも共通して使えますので、取っておいて損はありませんよ。
(出典:デジタル庁『gBizID(GビズID)』公式サイト)
対象外となるNG条件と審査の基準
「どんなに良い商品でも、これに該当すると即不採択」というNG条件(キル・ファクター)が存在します。審査員は数百件の応募書類に目を通すため、要件を満たしていないものは中身を詳しく見る前に弾かれてしまいます。行政書士の視点から、特に注意してほしいポイントを深掘りします。
1. 「モノ」を売るだけの事業は対象外
フェムテック補助金で最も誤解されやすいのがこの点です。例えば、「性能の良い吸水ショーツを開発したので、これをECサイトで販売したい」という事業は、本補助金の対象にはなりません。これは単なる「物販」であり、製品開発や販路開拓の支援になってしまうからです。
本事業が求めているのは、「製品・サービスを活用した仕組み(ソリューション)」です。吸水ショーツを用いるのであれば、「それを使った企業の健康セミナーを開催し、女性社員のヘルスリテラシー向上を測る」「配布と同時に相談窓口を案内し、利用状況をモニタリングする」といったように、あくまで「サービス(コト)」としての価値を提供し、行動変容を促す仕掛けが必要不可欠です。
2. 実証フィールドが決まっていない
「採択されたら営業して、導入してくれる企業を探します」というスタンスも非常に危険です。本事業は「実証事業」ですから、採択後すぐに実証実験をスタートできる体制が整っていることが前提となります。申請書の段階で、「〇〇株式会社での導入が決定しています」「〇〇市との連携協定を結ぶ予定です」といった具体的な実証フィールド(協力者)の名前が挙がっていないと、実現可能性が低いと判断され、審査の土台にすら乗らない可能性があります。
3. 新規性と独自性の欠如
すでに市場に溢れているサービスと同じものを「ウチもやります」では通りません。既存のサービスと比べて何が違うのか、なぜ御社がやる必要があるのか(独自性・優位性)を明確にする必要があります。例えば、「ターゲットを特定の職種(例:介護職)に絞る」「独自のAIアルゴリズムを活用する」「地域特性を活かした連携を行う」など、キラリと光る差別化ポイントが必要です。
これもNG!
自社グループ内だけで完結する実証や、単に福利厚生として外部サービスを契約するだけの取り組みも、事業としての発展性(外販の可能性)がないとみなされ、評価が低くなる傾向にあります。
補助金事業で必須となる効果検証と指標
国が税金を投入して補助金を出す以上、「なんとなく社員が元気になりました」「評判が良かったです」という定性的な感想文では許されません。客観的な数字(エビデンス)に基づいた報告が厳格に求められます。ここが多くの事業者様が苦戦するポイントでもあります。
最近のフェムテック実証事業において、事実上の必須要件となりつつあるのが、「WHO-HPQ(世界保健機関による健康と労働パフォーマンスに関する質問紙)」などの国際的な指標を使った効果測定です。
プレゼンティズムの可視化
企業が健康課題に取り組む際、よく使われる指標に「プレゼンティズム(Presenteeism)」があります。これは、「欠勤はしていないが、心身の不調により業務パフォーマンスが低下している状態」を指します。実は、欠勤(アブセントイズム)による損失よりも、このプレゼンティズムによる損失の方が経営へのインパクトが大きいと言われています。
補助事業では、サービス導入前(Pre)と導入後(Post)で従業員アンケートを実施し、このWHO-HPQスコアがどれくらい改善したかを測定します。そして、「スコアが〇〇ポイント改善したことにより、一人あたり年間〇〇円の労働生産性損失を防ぐことができた」という具体的な金額換算まで行うことが求められます。
データの質と回収率
効果検証を行う上でのもう一つの壁が、「アンケートの回収率」です。忙しい業務の合間に回答してもらうため、回収率が低すぎてデータとして使い物にならないという失敗例が後を絶ちません。申請段階で、「どうやって回答率を担保するか(インセンティブの付与や、業務時間内での実施許可など)」まで計画しておく必要があります。
また、最近では主観的なアンケートだけでなく、ウェアラブルデバイスのデータや健康診断の結果といった「客観的データ」とのクロス分析を提案する事業者が評価される傾向にあります。これから申請書を作成する方は、どうやって効果を「見える化」し、説得力のあるレポートを作成するかを、専門家を交えてしっかり設計図に落とし込んでおいてくださいね。
採択事例から学ぶフェムテック補助金の活用戦略
制度の仕組みやお金の話、そして厳しい審査基準について理解できたところで、次は「具体的にどんな事業が評価され、採択されているのか」を見ていきましょう。これから申請を考える皆さんにとって、過去の採択事例は言わば「正解が書かれたカンニングペーパー」のようなものです。
経済産業省のホームページには過去の採択事業者リストが掲載されていますが、社名や事業タイトルが並んでいるだけで、中身まで読み解くのは骨が折れますよね。ここでは、行政書士の視点で「なぜこの事業が評価されたのか?」という成功のポイントを因数分解し、皆さんが自社の企画に応用できる形に噛み砕いて解説します。
企業導入におすすめのサービスと成功事例
まず、企業が導入しやすく、かつ審査員からの評価も高い「鉄板」とも言えるモデルについてお話しします。それは、「オンライン相談窓口」と「専門家によるリテラシー教育」をセットにしたサービスです。
多くの企業では、人事部や上司が女性社員の健康状態を気にかけてはいるものの、「セクハラになるのではないか」「プライベートなことには踏み込みにくい」という壁があり、適切なサポートができていないのが現状です。一方で、社員側も「評価に響くかもしれない」という不安から、社内の人間には相談しづらいというジレンマを抱えています。
ここで成功しているのが、社外の助産師や産婦人科医、薬剤師などに、LINEや専用アプリを通じて匿名で相談できるシステムを導入した事例です。例えば、株式会社With Midwifeなどが提供する「顧問助産師」サービスなどが代表的ですね。このモデルの強みは、医療機関に行くほどではないけれど、誰かに聞いてほしいという「未病」の段階でケアができる点にあります。
採択されるためのポイントは、単に相談窓口を置くだけでなく、「その窓口がどれくらい利用され、どう意識が変わったか」を追跡できる仕組みがあるかどうかです。成功事例の多くは、相談窓口の提供とセットで、全社員(男性を含む)向けのセミナーを実施し、組織全体の風土改革を行っています。「相談できる場所がある」という安心感(心理的安全性)が、結果として離職率の低下や、産休・育休からのスムーズな復帰に繋がっているというエビデンスを提示できれば、採択への道はぐっと近づきますよ。
生理やPMSの課題解決に向けた導入事例
女性の健康課題の中で、最も多くの人が日常的に直面し、かつ労働生産性への影響が大きいのが「月経(生理)」や「PMS(月経前症候群)」です。毎月訪れる不調に対して、どのようなアプローチが評価されているのでしょうか。
非常にユニークかつ評価が高い事例として、「IoT生理用品ディスペンサー」の設置が挙げられます。これは、オフィスのトイレの個室に専用の機器を設置し、スマートフォンをかざすと生理用ナプキンが無料で受け取れるというサービスです。OiTr(オイテル)などが有名ですね。
「えっ、ただ生理用品を配るだけで補助金が出るの?」と思われたかもしれません。しかし、ここには深い戦略があります。このサービスの真価は、「生理用品を忘れた時の不安」を解消することだけではありません。専用アプリと連動させることで、デジタルサイネージで健康情報を配信したり、利用データを分析して在庫管理を最適化したりといった「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の要素が含まれている点が高く評価されているのです。
また、このような設備を導入すること自体が、会社から女性社員への「あなたの健康を大切に考えていますよ」という強力なメッセージになります。採択事例の分析を見ると、ハードウェア(ディスペンサー)の設置だけでなく、それを通じて「生理痛で休むことは悪いことではない」という雰囲気作りや、生理休暇の取得率向上といった「制度改革」まで踏み込んでいる企画が選ばれています。モノではなく、コト(体験と意識変容)を提供する視点を忘れないでくださいね。
PMS対策は「我慢」から「管理」へ
PMS(月経前症候群)によるイライラや集中力低下は、本人の性格の問題ではなく、ホルモンバランスによる医学的な症状です。最近では、低用量ピルの服用支援や、漢方相談などを福利厚生として導入し、PMSによる生産性低下を防ぐ実証事業も増えています。
不妊治療や更年期対策など解決課題別の傾向
フェムテックがカバーする領域は、生理だけではありません。ライフステージごとの課題、特に「不妊治療」と「更年期障害」は、キャリアを積んだ貴重な人材が離職してしまう大きな要因となっており、国も重点的に支援したいと考えている分野です。
不妊治療と仕事の両立支援
晩婚化が進む中、不妊治療に取り組む働き世代は増え続けています。しかし、不妊治療は急な通院が必要になることが多く、仕事とのスケジュール調整に悩み、退職を選んでしまうケースが後を絶ちません。
ここで採択されているのは、「治療データの可視化とスケジュール管理」を支援するサービスです。例えば、過去のホルモン値や治療履歴をアプリで管理し、通院の見通しを立てやすくする「vivola」のようなサービスや、企業内の理解促進研修をセットにした取り組みが評価されています。ポイントは、「いつ休むかわからない」という職場の不安と、「休みを言い出しにくい」という本人の不安、この双方をデータとコミュニケーションで解消する仕組み作りです。
更年期障害対策と「男性管理職」の巻き込み
そして今、最も熱い注目を集めているのが「更年期」対策です。40代〜50代の女性は管理職候補となる重要な層ですが、更年期の不調により昇進を辞退したり、離職したりする「更年期ロス」が経済的な打撃となっています。
この分野の採択事例で共通している成功法則は、「男性管理職や経営層を巻き込んでいること」です。更年期の症状は個人差が大きく、周囲からはサボっているように見えてしまうこともあります。そのため、当事者へのケア(チャット相談やオンライン診療)だけでなく、上司にあたる層に向けて「更年期とはどういうものか」「どうマネジメントすべきか」を教育するプログラムが含まれている事業は、非常に高く評価されます。
リトリートという選択肢
最近では、沖縄や温泉地などを活用した「転地療法(リトリート)」を更年期対策として実証するユニークな事例(沖縄セルラー電話など)も出てきています。日常から離れて心身を整えるプログラムも、データで効果を証明できれば立派なフェムテック事業になり得るのです。
健康経営とフェムテックの深い関係性
ここまで個別のサービスを見てきましたが、これらを導入する企業側のメリットについても触れておきましょう。実は、フェムテックの導入は、経済産業省が推進する「健康経営」の認定取得に直結する最強の施策なのです。
「健康経営優良法人」の認定要件には、「女性特有の健康課題への対応」という項目が明確に設けられています。つまり、補助金を活用してフェムテックを導入することは、コストを抑えながら健康経営のスコアを上げ、ホワイト企業としてのブランディングを強化する「一石二鳥」の戦略になり得るのです。
実際に、私がサポートした企業様の中にも、「採用活動で女性からの応募を増やしたい」という理由でフェムテック導入を決めたケースがあります。今の求職者は、給与だけでなく「働きやすさ」や「企業が社員を大切にしているか」をシビアに見ています。「当社はフェムテックを導入し、生理や更年期のケアも万全です」とアピールできることは、人材獲得競争において強力な武器になります。
経済産業省も、フェムテックを通じて企業の健康経営を加速させたいと考えています。申請書を作成する際は、「この事業を通じて、自社(あるいは導入先企業)の健康経営度調査のスコアがこれだけ向上する見込みです」といった具体的な波及効果まで記載すると、審査員の心に響くはずです。
(出典:経済産業省『健康経営』ポータルサイト)
PHR活用など最新の市場トレンドを解説
最後に、これからのフェムテック市場を勝ち抜くための最重要キーワード、「PHR(パーソナルヘルスレコード)」について深掘りします。2025年以降の補助金申請では、この視点があるかないかで勝負が決まると言っても過言ではありません。
PHRとは、個人の健康診断結果、服薬履歴、ウェアラブル端末(スマートウォッチなど)で計測した睡眠や運動データなどを、生涯にわたって統合的に管理・活用する仕組みのことです。これまでのフェムテックは、「生理管理アプリ」「妊活アプリ」といった単機能のものが主流でしたが、これからはそれらがすべて連携し、「個人の健康データを総合的に分析して、最適なソリューションをAIが提案する」という統合型ヘルスケアへと進化していきます。
例えば、会社の健康診断データで「貧血気味」という結果が出ている女性に対して、フェムテックアプリが自動的に「月経による貧血の可能性があります。一度婦人科で相談してみませんか?」とレコメンドを出し、そのままオンライン診療の予約まで完了する。そんなシームレスな体験が求められています。
実際に2025年度の実証事業では、マイナポータルとの連携や、企業の健診データとのAPI連携を前提とした高度なシステム開発が含まれる案件が優先的に採択される傾向にあります。もしこれから新規事業を企画するのであれば、単独のアプリを作るのではなく、「既存の健康プラットフォームといかにデータを繋ぐか」という視点を必ず盛り込んでください。それが、国が描く「医療DX」の未来図と合致するからです。
自社に合うフェムテック補助金の選び方まとめ
長くなりましたが、ここまで2025年のフェムテック補助金について、制度の裏側から具体的な攻略法まで解説してきました。最後に、行政書士として、そして一人の運営者として、皆さんに一番お伝えしたいことをまとめます。
補助金は、あくまで事業を加速させるための「手段」であって「目的」ではありません。「最大1,000万円もらえるから、何かフェムテックをやろう」という順序で考えると、必ずどこかで歪みが生じます。実証期間が終わった途端に誰も使わなくなる「死に体」のシステムを作っても、誰も幸せにはなりません。
正しいアプローチは、「自社の女性社員、あるいは顧客が抱えている本当の課題(ペイン)は何か?」を徹底的に突き止めることから始まります。まずは社内で匿名のアンケートをとってみてください。「実は生理痛で毎月休んでいる」「更年期が辛くて辞めようか迷っている」といった生の声が聞こえてくるはずです。その声を解決するために、最適なテクノロジーやサービスを探し、その導入コストを補うために補助金を使う。この順序さえ間違えなければ、たとえ審査の結果がどうあれ、その取り組みは必ず組織にとってプラスになります。
フェムテックは、女性のためだけのものではなく、企業が持続的に成長するための経営戦略そのものです。この記事が、御社の新しい一歩を踏み出すきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。もし申請手続きや事業計画の策定で迷うことがあれば、いつでも専門家にご相談ください。一緒に、誰もが働きやすい社会を作っていきましょう。
※本記事の情報は執筆時点(2025年最新版)の公募要領等に基づいた解説です。実際の申請にあたっては、必ず経済産業省や事務局が発表する最新の公式情報をご確認ください。
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