健康経営

健康経営の費用対効果は?計算式と事例でわかる投資の正解

健康経営 費用対効果

小野馨
こんにちは

ハートマス健康経営アカデミー代表の行政書士の小野馨です。

今回は、「健康経営の費用対効果は?計算式と事例でわかる投資の正解」というテーマでお話します。

「健康経営に取り組みたいけれど、本当に利益につながるのか不安だ」

「経営会議で導入を提案したいけれど、数字で根拠を示せないと却下されてしまう」

そんなふうに悩んでいませんか。経営者や管理職として、会社の資金を投じる以上、コストに対するリターンをシビアに見ることは非常に重要ですし、むしろ当然の責務だと思います。

私自身、多くの企業のサポートをする中で、担当者様が「経営層を説得するための武器(数字)」を求めている姿を何度も見てきました。

ポイント

実は、健康経営は単なる福利厚生や従業員への優しさアピールではなく、生産性向上や採用力強化、医療費削減といった具体的なメリットを生む「投資」です。

もちろん、導入の手間や効果が出るまでの時間といったデメリットも考慮する必要がありますが、正しい算出方法でシミュレーションすれば、その価値は明らかになります。

この記事では、最新の事例や論文データ、そして中小企業でも使える助成金の情報をもとに、あなたの会社の未来を変える投資対効果について、専門用語を噛み砕いてわかりやすく解説します。

  • 投資対効果(ROI)を算出するための具体的な計算ロジック
  • 見えない損失「プレゼンティーズム」を金額換算する方法
  • TOTOなどの成功事例から学ぶリアルな費用対効果の数値
  • 助成金を活用してコストを抑えつつ利益を最大化する手順

健康経営の費用対効果を算出するロジック

健康経営を「コスト(経費)」として捉えているうちは、その真価を引き出すことはできません。

まずは、これを「投資」へとマインドセットを根本から変えるところから始めましょう。

「投資」というからには、当然そこにはリターン(回収)が存在します。

ここでは、経済産業省のガイドラインや学術的な指標を用いて、どのようにして目に見えにくい効果を数値化し、経営判断の材料にするのか、そのロジックを深掘りして解説します。

投資としてのROIとコストの考え方

ビジネスの世界では、ROI(Return On Investment:投資対効果)という言葉が日常的に使われますが、健康経営においてもこの視点は絶対に欠かせません。

「社員の健康にお金を使って、一体いくら儲かるの?」という問いに対して、明確な答えを持つ必要があります。

この分野で最も有名かつ引用されるのが、世界的なヘルスケア企業であるジョンソン・エンド・ジョンソンの実績データです。

彼らの追跡調査によると、健康教育プログラムへの投資1ドルに対して、約3ドルのリターンがあったと報告されています。つまり、ROIは3.0です。

銀行に預けても増えない時代に、これほどの利回りを生む投資案件はそうそうありませんよね。

この「1対3」という数字は非常に魅力的ですが、ここで重要なのは「リターン」の内訳を正しく理解することです。

多くの経営者がイメージする「医療費の削減」だけがリターンではありません。むしろ、医療費削減は全体の一部に過ぎないのです。

健康経営のリターン(効果)に含まれる多様な要素

  • 生産性の向上:元気に出社し、集中して働くことによる成果の増加(プレゼンティーズムの改善)。
  • 組織の安定化:欠勤や休職が減り、代替要員を探すコストや現場の混乱がなくなる(アブセンティーズムの減少)。
  • 人材確保コストの削減:離職率が下がり、採用にかかる莫大な広告費やエージェント費用が浮く。
  • リスク回避(コスト・アボイダンス):メンタルヘルス訴訟や労働災害といった、発生すれば億単位の損失になりかねないリスクを未然に防ぐ。

特に「コスト・アボイダンス(回避されたコスト)」の視点は重要です。

「何も起きなかった」ことは評価されにくいですが、健康経営によって高ストレス者を減らし、休職を未然に防ぐことは、確実な利益貢献と言えるのです。

(出典:経済産業省『企業の「健康経営」ガイドブック

健康投資管理会計ガイドラインの活用

「効果が大事なのはわかったけれど、目に見えない『健康』や『活力』をどうやって測定すればいいかわからない」という方も多いでしょう。

そんな時に羅針盤となるのが、経済産業省が策定した「健康投資管理会計ガイドライン」です。

これは、従来ブラックボックス化していた健康経営の効果を、管理会計の手法を用いて客観的に見える化するための「共通言語」のようなものです。

このガイドラインを活用することで、自社の取り組みがどのようにお金(企業価値)に変わっていくのかを論理的に説明できるようになります。

ガイドラインでは、健康経営を以下の5つの要素で整理し、それぞれの因果関係(つながり)を明確にすることを求めています。

要素 具体的な内容 経営的な意味(翻訳)
①健康投資

(Investment)

健康診断の費用、産業医への報酬、ストレスチェック実施費、健康管理システムの導入費、人事担当者の人件費など。 これらは「削減すべき経費」ではなく、将来のキャッシュフローを生み出す資産を作るための「元手」です。
②健康資源

(Resource)

従業員のヘルスリテラシー(知識)、健康的な組織風土、従業員同士の信頼関係、蓄積された健康データ。 投資の結果として社内に残る「無形資産」です。他社が真似できない競争力の源泉(人的資本)となります。
③健康投資効果

(Effect)

生活習慣(運動・食事・睡眠)の改善、ストレスチェック結果の良化、アブセンティーズム・プレゼンティーズムの改善率。 短期から中期的に現れる変化です。現場のKPI(重要業績評価指標)として設定しやすい項目です。
④企業価値

(Corporate Value)

労働生産性の向上、売上・利益の増加、株価の上昇、ブランド価値の向上、離職率の低下。 経営者や株主が最も関心を寄せる最終的な成果です。財務情報だけでなく非財務情報も含みます。
⑤社会的価値

(Social Value)

国民医療費の適正化、健康寿命の延伸、地域社会への貢献、SDGsへの寄与。 社会全体へのインパクトです。ESG投資の文脈で評価されるポイントとなります。

このフレームワークを使うメリットは、「施策」と「結果」のつながりが整理されることです。

「ウォーキングイベント(投資)」が「社員の運動習慣(資源)」を作り、それが「体調の良さ(効果)」に繋がり、最終的に「業績アップ(企業価値)」になる。

このストーリーを描くことが、戦略的な健康経営の第一歩です。

(出典:経済産業省『健康投資管理会計ガイドライン』)

プレゼンティーズム損失額の計算方法

ポイント

健康経営の費用対効果を語る上で、避けて通れない最重要キーワードがプレゼンティーズム(Presenteeism)です。

これは、「欠勤はしていないが出勤はしている。しかし、何らかの健康問題(花粉症、腰痛、頭痛、寝不足、メンタル不調など)によって、業務パフォーマンスが低下している状態」を指します。

実は、企業が抱える健康関連コスト全体を「氷山」に例えると、水面の上に見えている「医療費(会社負担分)」や「病欠(アブセンティーズム)」によるコストは、全体のわずか4分の1程度に過ぎないと言われています。

では、水面下に隠れている巨大なコストは何か? それこそがプレゼンティーズムによる損失なのです。

なぜプレゼンティーズムは見過ごされるのか?

それは、「社員が席に座っているから」です。経営者から見れば、みんな真面目に働いているように見えます。しかし、頭痛を我慢しながらモニターを見つめている社員の作業効率は、本来の6割程度かもしれません。この「見えない4割の損失」を可視化し、削減目標を立てることこそが、健康経営で利益を出すための最大のポイントなのです。

研究によると、プレゼンティーズムによる経済的損失は、医療費の約5倍、アブセンティーズムの約6倍にも達すると推計されています。

つまり、医療費を削るよりも、社員の「なんとなく不調」を解消してパフォーマンスを上げる方が、経営的なインパクトは遥かに大きいのです。

東大1項目版による生産性低下の測定

「パフォーマンスの低下なんて、主観的なもので測れないじゃないか」と思われるかもしれません。ですが、学術的に検証された測定ツールが存在するんですね。

日本企業で最も広く採用されているスタンダードな手法が、東京大学が開発した「東大1項目版(SPQ:Single Item Presenteeism Question)」です。

この手法の最大の特徴は、たった1つの質問で測定できる簡便さにあります。

従業員の負担にならず、かつ高い精度で実態を把握できるため、経済産業省の調査などでも標準的に使用されています。

東大1項目版の質問内容

「病気やけががない時に発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事を評価してください(0%〜100%)」

この回答から、以下のように損失額をシミュレーションできます。

【ステップ1:損失率の算出】

例えば、ある従業員が「今日の調子は70%です」と回答したとします。

この場合、100% - 70% = 30% が、健康問題によって失われたパフォーマンス(損失率)となります。

【ステップ2:損失額の推計】

算出した損失率を、その従業員にかかっている人件費に掛け合わせます。

ここでの人件費は、給与だけでなく、賞与、法定福利費(会社負担の社会保険料など)を含めた「会社が支払っている総額」で計算するのがリアルです。

計算式(例)

損失額 = 1人あたりの平均人件費 × 全従業員数 × 平均プレゼンティーズム損失率(%)

具体的な数字で見てみましょう。

平均年収600万円(法定福利費込)、従業員100名の中小企業で、全社の平均損失率が20%だったとします。

600万円 × 100名 × 20% = 1億2,000万円

いかがでしょうか。

なんと、年間で1億2,000万円相当もの生産性が、知らず知らずのうちに失われている計算になります。

「利益率を1%上げる」のは大変な努力が必要ですが、「健康投資をして、この20%の損失を15%に改善する」ことは、十分に現実的で、かつインパクトの大きい施策だと思いませんか?

この数字を経営会議で提示できれば、「健康経営なんて金がかかるだけだ」とは誰にも言わせない説得力を持つはずです。

アブセンティーズムと医療費の削減

プレゼンティーズム(見えない損失)のインパクトが巨大であることをお話ししましたが、もちろんアブセンティーズム(欠勤・休職)と医療費(見えるコスト)の削減も、確実なキャッシュフローの改善につながる重要な要素です。

特にアブセンティーズムに関しては、近年衝撃的なデータが発表されています。

2025年に横浜市立大学の研究グループが発表した推計によると、日本の労働者のメンタルヘルス不調による経済的損失は、なんと年間約7.6兆円に上るとされています。

これは精神疾患にかかる医療費の7倍以上の規模です。

メンタルヘルス不調による休職者が1名出ると、その企業損失は年収の2〜3倍とも言われます。

なぜなら、以下のような副次的コストが発生するからです。

  • 休職中の社会保険料の会社負担分(給与は出なくても保険料は発生します)
  • 代替要員の採用コストや派遣スタッフの費用
  • 周囲の従業員への業務負荷増による残業代の増加
  • 休職者への復職支援にかかる人事担当者の工数

ストレスチェックの結果を分析し、高ストレス者が多い部署の職場環境を改善することは、これらの「将来確実に発生するであろう出費」を未然に防ぐ、非常に賢いリスクヘッジとなります。

効果が出るまでのタイムラグに注意

一点だけ注意していただきたいのは、医療費などのコストは、健康施策を始めてすぐに下がるわけではないということです。むしろ、初期段階では「受診勧奨」によって、今まで病院に行っていなかった人が受診するため、一時的に医療費が上がることもあります(これは隠れた病気が見つかる良い傾向です)。単年度の収支だけで「効果がない」と判断せず、3年〜5年スパンで投資対効果を見ることが成功の秘訣です。

(出典:横浜市立大学 プレスリリース『メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に』

データが証明する健康経営の費用対効果

ここまでは理論と計算式についてお話ししてきましたが、「理屈はわかったけど、実際にやってみて本当に成果が出るの?」という疑問も当然あるかと思います。そこでここからは、実際に健康経営に取り組んでいる先進企業の具体的な成果データや、株式市場での評価、そして採用現場で起きている変化について、事実に基づいて解説していきます。

TOTOやJ&Jの事例に見る具体的成果

「健康経営の優等生」として名高いTOTOグループは、その取り組みの成果を経年データとして詳細に公開しており、費用対効果を考える上で最高の教科書になります。

彼らの素晴らしい点は、「健康診断受診率100%」といったプロセス指標だけでなく、その結果どうなったかという「アウトカム指標」まで追跡している点です。

2024年度の最新データによると、TOTOグループは健康診断受診率100%を維持しつつ、従業員のヘルスリテラシー(健康ポータルサイトへの登録率)を、2021年度の43.0%から2024年度には74.0%へと劇的に向上させています。

これは、会社からの働きかけによって社員の健康意識が確実に変わったことを示しています。

そして、私が特に注目していただきたいのが、「女性特有の健康課題」に対する施策のROI(投資対効果)です。

TOTOでは、月経や更年期障害といった女性特有の悩みに対するオンライン診療プログラムなどを導入しました。その結果、プログラム参加者の仕事のパフォーマンススコア(SPQ)が以下のように改善したのです。

TOTOグループ:女性の健康支援プログラムの成果

  • 月経プログラム参加者:参加前 61.0% → 参加後 75.6% (+14.6ポイント向上)
  • 更年期プログラム参加者:参加前 67.4% → 参加後 73.5% (+6.1ポイント向上)

パフォーマンスが14.6%向上するということは、単純計算でその従業員の生産性が1.15倍になることを意味します。もし、この従業員が年間1,000万円の付加価値を生んでいるとしたら、146万円分のプラス効果です。プログラムの導入費用を差し引いても、十分すぎるほどのお釣りがくる計算になります。このように、全社員一律ではなく、課題を抱えている層にピンポイントで投資することで、極めて高いROIを実現できるのです。

(出典:TOTO株式会社『社員の健康について』

健康経営銘柄の株価と企業価値の相関

健康経営の費用対効果は、社内の生産性だけにとどまりません。外部、特に株式市場からの評価という形でも明確に表れています。

経済産業省と東京証券取引所は、毎年「健康経営銘柄」として、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を選定しています。

興味深いことに、この「健康経営銘柄」に選ばれた企業の株価パフォーマンスは、長期的にはTOPIX(東証株価指数)の平均を上回る傾向にあることが分析されています。

なぜ、社員の健康にお金を使う企業の株価が上がるのでしょうか?

理由はシンプルです。投資家たちは「従業員の健康管理まで目が行き届いている企業は、ガバナンス(企業統治)がしっかりしており、リスク管理能力が高く、持続的に成長する可能性が高い」と判断するからです。

逆に言えば、長時間労働やパワハラが横行しているような企業は、いつ不祥事で株価が暴落するかわからない「投資リスクの高い企業」と見なされます。

昨今のESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)の潮流の中で、「S(社会)」の指標として健康経営は極めて重要視されています。

健康経営に取り組むことで、株価が上がり、資金調達コストが下がる。これもまた、経営視点での大きな「費用対効果」の一つと言えるでしょう。

(出典:ACTION!健康経営『健康経営のメリット:株価との相関』

採用力強化とリクルート効果のメリット

私が中小企業の経営者様に健康経営をお勧めする際、今最も強調しているメリットがこの「採用効果」です。

正直なところ、少子化による人手不足は深刻で、今は完全な「売り手市場」です。優秀な人材を確保するためのコスト(採用単価)は高騰し続けています。

そんな中、求職者、特にこれから社会に出る学生たちは、企業選びで何を重視しているのでしょうか。

マイナビなどが実施した2025年卒の就活生を対象とした意識調査によれば、「福利厚生の充実」や「安心して長く働ける環境」が、給与額と同じくらい、あるいはそれ以上に重要視されています。

学生たちは、「ブラック企業」に入ってしまうことを極端に恐れています。

そこで彼らが企業の「ホワイト度」を見極めるフィルターとして使っているのが、「健康経営優良法人」の認定マークなのです。

この認定を取得していることは、学生やその保護者に対し、「この会社は国が認めるレベルで社員を大切にしていますよ」という、何よりも強力な証明書になります。

採用における費用対効果の具体例

  • 母集団形成コストの低下:求人票に認定ロゴを載せるだけでエントリー数が増え、広告費をかけずに多くの候補者を集められる。
  • 内定承諾率の向上:最終的に迷った際、「社員を大切にする会社」というイメージが決め手となり、内定辞退を防げる。
  • 早期離職の防止:「健康経営」に関心を持つ層は、安定志向で真面目な人材が多く、入社後の定着率が高い。これにより、採用と教育にかかった数百万円の投資が無駄になるのを防げる。

採用エージェントに高い紹介料を払う前に、まずは健康経営優良法人の認定取得を目指すこと。

これが、実は最もコストパフォーマンスの良い採用戦略になりつつあるのです。

(出典:ACTION!健康経営『健康経営 採用 影響 アンケート』

2025年版ガイドブックと戦略マップ

これから健康経営を本格化させるなら、必ず目を通していただきたいのが「健康経営ガイドブック」です。

特に最新の2025年3月版では、より実践的で効果が出やすい手法が紹介されています。

このガイドブックの中で、費用対効果を最大化するために最も重要だとされているのが、「健康経営戦略マップ」の作成です。

これは、企業の「経営課題」と「健康課題」を一本の線でつなぎ、その因果関係を見える化したロジックモデルのことです。

戦略マップの考え方(例)

  1. 経営課題(ゴール):「新しいイノベーションを生み出し、売上を上げたい」
  2. 健康課題(ボトルネック):「しかし、社員が睡眠不足で集中力がなく、新しいアイデアが出ない」
  3. 健康投資(施策):「だから、睡眠セミナーを開催し、仮眠スペースを設置する」

多くの企業が陥りがちな失敗は、「他社がやっているから」という理由で、なんとなくウォーキングイベントやヨガ教室を開催してしまうことです。

それが自社の経営課題と関係なければ、ただのコスト(浪費)に終わってしまいます。

戦略マップを作ることで、「経営目標を達成するために必要な健康投資は何か」が明確になり、無駄な施策にお金を使うことを防げます。

つまり、最短距離で成果を出す投資ができるようになるのです。

(出典:健康経営優良法人認定事務局『健康経営ガイドブック2025』

助成金や補助金を活用して投資対効果を高める

ROI(費用対効果)を高める方法は、分母である「リターン」を増やすだけではありません。

分子である「投資コスト」を実質的に下げることも非常に有効です。そのためにぜひ活用していただきたいのが、国や自治体が用意している助成金・補助金制度です。

「健康経営そのもの」に対する直接的な助成金はありませんが、健康経営に関連する施策(働き方改革、受動喫煙対策、健康診断など)に使える制度はたくさんあります。

健康経営に活用できる主な助成金・補助金の例

  • 働き方改革推進支援助成金:労働時間の短縮や年休取得促進に向けた環境整備(勤怠管理システムの導入や研修など)にかかる費用の一部を助成。
  • 受動喫煙防止対策助成金:職場に喫煙室を設置したり、換気装置を導入したりする費用を補助。
  • 両立支援等助成金:育児・介護と仕事の両立支援、男性の育休取得促進などに取り組む企業を支援。
  • エイジフレンドリー補助金:高年齢労働者が安全に働けるよう、身体機能の低下を補う設備や健康保持増進のための取り組みを補助。

これらを賢く活用すれば、例えば「100万円かかるシステムの導入費が、助成金で半額になった」というケースも珍しくありません。

コストが半分になれば、当然ながら投資対効果(ROI)は2倍に跳ね上がります。

専門家への相談を推奨

助成金は要件が細かく、申請期限も決まっています。せっかくの受給チャンスを逃さないためにも、申請を検討する際は、最新の公募要領を確認するか、社会保険労務士などの専門家に相談しながら計画的に進めることを強くおすすめします。

(出典:厚生労働省『働き方改革推進支援助成金』

中小企業が利益を出すための導入手順

「ここまで読んだけど、やっぱり大企業の話でしょ? ウチのような中小企業には余裕がないよ」と思われたかもしれません。

しかし、私の経験上、むしろ小回りの利く中小企業こそ、健康経営の効果は早く、そして大きく出ます。

従業員数が少なければ、社長のメッセージはダイレクトに届きますし、一人の健康状態が改善された時の全体へのインパクトも大きいからです。

いきなり高価な管理システムを入れる必要はありません。以下のステップで、できることから始めてみてください。

  1. 現状把握(サーベイ):まずは定期健診の結果やストレスチェックの集団分析を見て、自社の課題がどこにあるのか(例:喫煙者が多い、運動不足が多い、メンタル不調が多いなど)を知ることからスタートです。
  2. 計画(Plan):「今年は腰痛対策に集中しよう」「まずは喫煙率を5%下げよう」など、優先順位を決めて現実的な目標を立てます。戦略マップを簡易的に書いてみるのも良いでしょう。
  3. 実行(Do):お金のかからないことから始めます。例えば、「ラジオ体操を導入する」「自販機の飲料を健康的なものに変える」「階段利用を推奨するポスターを貼る」などは、明日からでも費用ゼロで始められます。
  4. 評価(Check):やったっぱなしにせず、1年後に健診結果やアンケートで効果を確認します。「やってみたら意外と社員が喜んでくれた」という小さな成功体験が、次の投資への自信につながります。

このPDCAサイクルを回すこと自体が、組織のコミュニケーションを活性化させ、「会社は自分たちのことを気にかけてくれている」という従業員のエンゲージメント(信頼)を高めます。

これこそが、お金では買えない最大の「利益」なのです。

健康経営の費用対効果を最大化する結論

健康経営の費用対効果を追求することは、決して「従業員の健康で金儲けをする」といった不純なことでも、「福利厚生をケチる」ことでもありません。

それは、「従業員という最強の資産」の価値を最大化し、会社と社員が共に幸せになるための、極めて真っ当な経営戦略そのものです。

プレゼンティーズムによる「見えない損失」を減らし、優秀な人材を採用・定着させ、企業価値を高める。

これだけのリターンが見込める投資案件は、ビジネスの世界広しといえども、他になかなかありません。

まずは自社の「見えない損失額」を東大1項目版で計算してみることから始めてみませんか。

漠然とした不安が具体的な「数字」に変わった瞬間、あなたが経営者として取るべき行動は、自然と見えてくるはずです。

※本記事で紹介した数値や計算式は一般的な目安です。各企業の業種や従業員構成により効果は異なります。助成金の申請等は最新の公的情報をご確認の上、専門家にご相談ください。

定款変更から融資、販路開拓までワンストップで解決

健康経営をテコに会社を強くするには、「定款」や「資金調達」といった基盤作りが欠かせません。しかし、税理士、社労士、コンサルタント…と、バラバラに依頼するのは手間もコストもかかります。

私たちは、強力な提携プラットフォームと連携し、それら全てを一箇所で完結させる「起業支援エコシステム」を構築しました。

  • 電子定款:印紙代0円&信用獲得できる戦略的定款を作成
  • 創業融資サポート:プロの支援でキャッシュフローを安定化
  • 営業代行:健康経営認定を武器に販路を拡大

行政書士としての「法務視点」と、ビジネスの「実利」を組み合わせた、最短ルートで強いマイクロ法人を作る方法を公開しています。

-健康経営